地域変異とは

 ヒトすなわち人間は、世界中の様々な地域の様々な人種で構成されておりますが、生物学的にはすべてホモ サピエンスという種に属します。人種は、ヒトの進化の長い時間の中で分化、形成され、形態的にも生態的にも差異のある、いわゆる地域変異です。  植物においても、大なり小なりヒトにおける人種のような地域変異があり、物理的に離れた地点の個体(群)には差異があり、このような変異を地域変異と呼んでおります。

地域固有の遺伝子構成

 植物は、動物のように自分自身で移動することが出来ず、隣接する個体ないし個体群間だけで交雑を繰り返してきましたので、動物以上に地域ごとに異なる遺伝子構成を形成してきました。従って、地理的に隔離された地点に生育するまたは生育していた異なる遺伝子構成からなる個体を植え戻すことは、せっかく多様化した遺伝子構成を、交雑によって同じような遺伝子構成に収斂させる結果を招くことになります。

植え戻しの本当の目的は

 自生地での個体群の復元の本来の目的は、単に個体数を殖やすことではありません。その地の固有の遺伝子構成を維持することなのです。このような理由から、「植え戻し」を実施するにあたっては、必ずその地に生育していた個体(群)の「植え戻し」を行わなければなりません。

その場所に由来するとは

  1. その場所に生育していた株であること。
  2. その場所に生育していた株の、分け株であること。
  3. その場所に生育していた株または株どうしの交配による実生株であること。
  4. ただし、花の色や形など、我々の好みで、特定の特徴だけで選別した個体は決して植え戻してはいけません。自然界の淘汰に任せるべきです。