エクアドルのラン(1)

<ページ紹介>
南米コロンビアからエクアドル、ペルーに至るアンデス山脈中腹の雲霧林帯は、世界中で最もラン科植物が豊富です。この地域にはランだけでなく、多様な植物が分布し、まさに生物多様性の宝庫と言える。この3カ国には、ランだけでも数千種が知られ、それらは現在でもさらに多様な種へと分化する過程にある考えられています。現地で撮影した植物や自然をご覧になって下さい。今後シリーズでご紹介します。

▼写真をクリックすると、拡大して見ることができます

エクアドルのラン(1)
No.1Gomphichis validaエクアドル南部サラグロ、標高約3500m。最も標高の高いところに生育する地生ランの一つ。高さ30−40cmで、花は雪白色、花弁とがく片の表面には繊毛が密生する。No.6の写真のすぐ近くで撮影。以前、Aa sp.と同定したが、誤りであった。
No.2 Brachyonidium sp.キト近くのミンド、標高約2000mにあるオニャータ氏のラン園、近くの山から採集したとのこと。矮性、根茎はコケ上を這い、長さ10-20cmに達し、花の直径は約3cm。側がく片が合着しているため、がく片は上下の2枚だけのようになる。唇弁とずい柱は極端に退化し、痕跡程度。
No.3. Brachyonidium sp.クエンカからリモンへの途中、アンデス東斜面標高約2800mの川沿いの林床。根茎は太く、直立して高さ40-50 cmになる。花は大きく、長さ5cm前後。花弁の先は尾状になり、反り返りながら下垂する。花は前種とは逆向きに咲き、合着した側がく片は上側に位置している。
Hoffmeisterella eumicroscopicaクエンカ近くの渓流沿い、標高3000m前後。川面に張り出している枝に着生する。葉は肉質で扇状に展開する。三角形の唇弁が上向きになって咲き、細い花弁やがく片は全て下を向き、人形を思わせる。Oncidium nubigerum等と混生する。
No.5. Odontoglossum pardinumクエンカ近くの渓流沿いの樹幹や枝に着生している。標高約3200m。年間を通じ冷涼な気候で昼夜の温度差は10度前後であるが、季節に変化はほとんどない。花茎は1m以上に達する。一緒に写っているのはいわゆるアナナスである。
No.6. サラグロ無線基地(3500m)インカの宝物が隠されたという伝説のあるサラグロにある軍の無線基地近くで撮影をしていたところへ、警戒にあたっていた軍人2人が現れ、付近の花を手当たり次第に持ってきてくれた。左から、齊藤、宇田川芳雄氏、軍人。オドントグロッスム、テリポゴン、 ムシトリスミレ、 アア(No.1)などがあった。
No.7.雲霧林(2800m)アンデス東斜面に見られる典型的な雲霧林。写真では樹高が低いように見えるがどれも10-15mはある。藪のように見える低木層の高さは3-5m。樹幹には地衣類、コケ、シダ、アナナス類、ラン等がびっしりと着生し、1本の樹に優に百種以上の植物が生育している。
No.8. 雲霧林低木層の内部エクアドルでは高地の雲霧林の低木層はリピドクラドゥムという細い茎で長さが20-30mになる竹で覆われている。そのために、日中でも内部は暗く、湿度も100%近い。林床には倒木が幾重にも折り重なり、その表面は大小さまざまな植物に覆われている。
No.9.Masdevallia roseaNo.8.の林内の倒木上に咲いていた。周囲2-3m以内だけでも10- 20種のランが自生している。また発芽後やっと葉が出たばかりの大型のランの苗などもあり、あらゆる植物の苗床の役割をしている。花は目を見張るような美しいバラ色、楕円状の部分は側がく片が癒合し、中央の細いのが背がく片である。
No.10.Masdevalliaコロンビア国境沿いチレス山の太平洋側斜面の雲霧林内(2500m)。1日車で走っても全く人に会うことはなかった。写真は道路際からほんの2-3mの場所で撮影した。Masdevallia 属の花は外側のがく片ばかりが大きく、かつ互いに癒合して筒状になるものが多い。
No.11. Telipodon sp.(2800m)No.3のBrachyonidiumと同じ場所で咲いていた。Telipogon属に限らず、どの着生ランも写真のように本当に根だけが樹幹や枝にまとわりついているだけで、根が剥き出しのものが多い。林内は日中でも湿度が高いが、毎日夕方から朝までは深い霧に包まれる、水分は根の表面から直接吸収する。
No.12.サソリ(2000m)アンデス山脈の中央台地あるいは盆地部分はシエラと呼ばれ,大地が剥き出しになった乾燥地帯である。写真はクエンカの南、ライオン川沿い。付近には中型(高さ1-3m)のサボテンやティランジアが群生していた。このような場所にはサソリが多い。ちなみに我々が滞在したクエンカのロッジの浴室にもサソリが出没した。

一覧にもどる